ロボット技術を用いた手術

当院では手術支援ロボット「ダビンチ」「Rosa」を導入しております。

手術の特徴とメリット

【高精度の操作】
ロボット手術で用いられる手術道具は、人間の手や指先のように関節機能があり、手振れも一切なく、精度の高いスムーズな動きが可能です。また医師が直接観る内視鏡画像は極めて高精細です。これらの機能を用いることで細部まで正確で安全な処置が可能になります。
 
【小さな切開で早期の回復】
開腹手術に比べて小さな切開での手術が可能です。術後の痛みの軽減や早期離床・回復につながります。また高齢の方や併存症をお持ちの患者さんではとくに身体的負担が少ないため回復がスムーズです。
 
【難度の高い手術を安全に】
高い操作性や身体への負担軽減により、ロボット手術は通常の腹腔鏡手術では難しい場所の手術、難度の高い術式をより安全に行えることが報告されています。
 

ダビンチ

適応疾患

当院では現在、以下の疾患に対して、ダビンチを用いたロボット手術を保険診療で行っています。
【外科領域】
胃:胃悪性腫瘍
大腸:結腸および直腸の悪性腫瘍
肝臓:血管や胆管の切除・再建を要さない肝腫瘍(悪性・良性腫瘍)
膵臓・胆管:血管切除・再建を要さない膵臓・胆管腫瘍(悪性・良性腫瘍)
【婦人科領域】
子宮良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症など)に対するロボット支援下腹腔鏡下子宮全摘術
子宮体癌(1A期)に対するロボット支援下子宮悪性腫瘍手術
子宮脱に対するロボット支援下仙骨腟固定術
【泌尿器科領域】
副腎摘除術、腎悪性腫瘍(腎部分切除術、腎・腎尿管全摘術)、腎盂形成術、膀胱全摘術、前立腺全摘術、仙骨膣固定術

  外科 花井 恒一 教授

本邦ではじめてダビンチシステム(DVSS)での直腸がん手術を行って以来500例を超える手術を経験してきました。DVSSは高解像度の画面、鉗子の先端に関節や手振れ防止機能などを持つことで精緻な手術ができます。とくに狭い骨盤内操作を要する難度の高い直腸がん手術でも安全性に優れ、根治性を損なわず機能温存など生活の質も向上できます。当院では2023年9月にDVSSが導入され、2024年8月までに46例の大腸(結腸・直腸)がん手術を行ってまいりました。近年、大腸がんはいろいろな治療を組み合わせて行うことにより、治療効果が上がってきています。患者さんや家族との会話を重視し年齢、生活に合わせた質の高い大腸がん治療を提供いたします。

  外科 加藤 悠太郎 教授

肝胆膵領域では、ダビンチを用いて肝臓手術のほぼ全ての術式と膵臓手術(体尾部切除術)を通常の保険診療で行なっております。また膵臓の高難度術式である膵頭十二指腸切除術も保険診療で行えるようになりました。対象疾患は肝臓や膵臓・胆道の癌や良性腫瘍で、血管切除再建を必要としないほぼすべての腫瘍に対してロボット手術を積極的に行っています。担当したロボット肝切除は150例以上と本邦では最多です。経験豊富な術者、助手、看護師、臨床工学技士で構成する専門性の高いチームが手術を担当し、難度が高いとされる低侵襲(非開腹)肝胆膵手術を、身体に優しく術後合併症が少なく根治性も高い治療として患者さんに提供します。ロボット手術によって、高齢や併存症をお持ちの患者さんも含め多くの患者さんに家庭生活や社会活動への早期復帰を目指して頂きたいと思います。

Rosa

適応疾患

変形性股関節症、変形性膝関節症に対する人工関節手術

  整形外科 金治 有彦 教授

「Rosa」は2007年にフランスで開発された神経外科領域・整形外科領域の手術支援ロボットで, 我が国では現在人工股関節置換術(THA)用の「Rosa Hipシステム」と人工膝関節置換術(TKA)用の「Rosa Kneeシステム」が同じロボットで使用できます。Rosa Hipシステムではランドマークポイントを参照として画像上で計測されるカップの角度情報と, 6軸垂直多関節ロボットアームの3次元座標を連携させる作業を行うことで,仮想3次元空間における外方開角,前方開角の角度情報が画面上に表示され, ピンを立てることなくターゲットへ向けてカップのついたハンドルを合わせることができます。カップのインパクション作業実施時にはロボットアームが固定されていることによりブレも防止され,正確なカップ設置が可能となります。当科では10月22日に50代の女性に1例目のTHAを実施して以来,Rosa Hipシステムを使用したT H Aが311関節(クリーブランド大学に次ぐ世界第2位)、Rosa kneeシステムを使用したTKAが55関節に行われています。THAの臨床成績は良好でカップ外方傾斜角,前捻角の絶対誤差はそれぞれ1.3度,1.8度です。