内視鏡センター

内視鏡センターでは消化管や胆道・膵臓の内腔にできた病変を内視鏡で診断・治療する部門です。
上部消化管は上部消化管内視鏡、深部小腸はカプセル内視鏡やバルーン小腸内視鏡、大腸は大腸内視鏡や大腸カプセル内視鏡、胆道・膵臓は超音波内視鏡を用いて診療を行います。

上部消化管(食道・胃・十二指腸下行部)

食道・胃・十二指腸を調べる上部消化管内視鏡は飲み込むときに、げーげーとなる激しい嘔吐反射が出現する場合が多く、検査を受けられることを敬遠される患者様も多いようです。当院の上部消化管内視鏡検査は、患者様からのご希望があれば鎮静剤(ミダゾラム)を使用して、眠くなった状態で受けていただくことが可能です。外科手術で使用する全身麻酔とは異なりますが、9割程度の患者様は全く記憶がない状態で検査が終わったとおっしゃり、近年では使用を希望する方が増えています。薬の副作用を懸念される患者様にも、丁寧に説明し安全を第一に考え病状や体重に応じて適切な使用量を投与します。もう1つの方法として鼻から入れる経鼻内視鏡検査があります。通常径の内視鏡に比べると細く、嘔吐反射が軽く済むことが多いとされています。やや画質が劣る(以前の装置ほどではありません)ことや、行うことができる処置に限りがありますが、最近検診などでは広く使用されます。ただし、当センターは精密検査機関であるため、できる限り通常径の内視鏡を用い、鎮静剤使用の上でこの装置でしかできない病変の拡大観察や狭帯域光観察(NBI)などを用いて詳細な観察を行い病気の発見に努めています。



 また、特殊な検査法に超音波内視鏡検査があります。通常の内視鏡観察ではわかりにくい正常な粘膜に覆われた病変(粘膜下腫瘍)や、がんの深達度診断などに用いています。


内視鏡的治療

 近年の内視鏡装置の発展は目覚ましく、過去には外科手術でしか治療できなかった早期がんを内視鏡を用いて切除する方法が開発されました。内視鏡的粘膜下層切開剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection略してESD)といい、当センターでは早期食道がん、早期胃がんについて病変の精密検査を行った後、適応がある病変に対して積極的にこの治療法を取り入れています。そのほか、消化管出血に対する止血術も様々な種類の器具や薬剤を準備し、24時間体制で緊急対応できるようにしています(写真3)。

小腸(十二指腸、空腸、回腸)

小腸は口からも肛門からも遠く、かつ全長が4~6メートルと長く、後腹膜に固定されていない自由腸管であるため、以前は内視鏡が入らず、暗黒大陸と言われていました。最近ではカプセル内視鏡やバルーン内視鏡の開発のおかげで、小腸全域の内視鏡診断、内視鏡治療が可能となりました。我々は、カプセル内視鏡とバルーン内視鏡を用いて、各種小腸疾患(出血、炎症、腫瘍、医原性疾患、先天疾患)の診断、内視鏡治療(止血、腫瘍摘除、狭窄に対するバルーン拡張術、整復)を行っています。

また、従来は胃切除等の手術に伴うRoux-en-Y再建術やビルロート再建術を行うと経口内視鏡を用いた膵胆管系処置が不可能となり、経皮経肝的アプローチをせざるを得ないことが多くありました。経口的バルーン内視鏡で術後再建腸管を介する膵胆管系の内視鏡診断・治療を行っています。

大腸

大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなります。大腸癌は食生活の欧米化などで罹患数、死亡数とも年々増加し、2023年のがん統計予測では男女合わせて罹患数は第1位、死亡数は第2位(男性では第2位、女性では第1位)となっています。我々は、大腸内視鏡、大腸カプセル内視鏡を用いて、前癌病変である腺腫や大腸癌の診断を行っています。内視鏡治療の適応決定にはリンパ節転移の可能性のある粘膜下層深部浸潤癌や癌の範囲を的確に診断することが重要で、我々は画像強調・色素拡大観察を用いて診断しその有用性を評価しています。当院では外来または入院で大腸腫瘍に対する内視鏡治療を行っており、平坦型早期大腸癌や線維化を来した大腸腺腫等に対してはESDを行っています。

また、腸閉塞を呈するような進行大腸癌に対してはステント治療も行っています。

炎症性腸疾患(IBD)

小腸・大腸を中心とする消化管に原因不明の炎症や潰瘍を引き起こす疾患で、広義では腸管ベーチェット病・単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症などが含まれ、狭義では潰瘍性大腸炎やクローン病を指します。食生活の欧米化などで日本でも10~40歳代を中心に患者数が年々増加しています。当院は愛知県の難病指定病院であり、難病指定医を多数外来に配属させています。CT、大腸内視鏡、小腸X線検査、注腸X線検査、ダブルバルーン小腸内視鏡、パテンシーカプセルによる開通性評価・小腸カプセル内視鏡、大腸カプセル内視鏡を用いて、IBDに対し低侵襲かつ的確に診断するよう心がけています。また、合併症である消化管狭窄に対しては大腸内視鏡やバルーン小腸内視鏡を用いたバルーン拡張術を積極的に行い、手術の回避につなげています。

胆道・膵臓

 胆道や膵臓の精密検査に超音波内視鏡Endoscopic Ultrasonography略してEUS)があります
通常の体外式超音波検査とは異なり、骨、胃や腸の中の空気、おなかの中の脂肪が、観察の妨げになることはありません。胃や十二指腸と隣接している胆嚢・胆管・膵臓などの病変も、すぐ近くから観察が行えるため、通常のエコー検査より詳細な画像情報が取得でき、精密に調べることができます。
CTMRI検査では見つからないような10mm以下の小さな腫瘍などの病変も見つけることが可能です
 
 

超音波内視鏡下穿刺吸引法:EUS- FNAFine Needle Aspiration)

超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は、胃や十二指腸の消化管から(超音波内視鏡:EUS)で膵臓・胆道などの腫瘤を観察し、消化管内から針を刺して組織を採取する方法です。 直接組織を採取し評価することにより、診断や治療方針の決定に役立ちます。

当センターで扱う代表的疾患

・食道がん、その他の悪性腫瘍
・食道粘膜下腫瘍
・食道潰瘍
・逆流性食道炎
・好酸球性食道炎 

・胃がん、その他の悪性腫瘍
・胃潰瘍
・ヘリコバクターピロリ感染胃炎
・胃粘膜下腫瘍
・好酸球性胃腸炎 

・十二指腸がん、その他の悪性腫瘍
・十二指腸潰瘍
・十二指腸粘膜下腫瘍
・食道・胃・十二指腸の病変からの消化管出血  など

・小腸出血
・小腸潰瘍
・小腸腫瘍
・小腸憩室 など

・大腸腫瘍、大腸がん
・大腸粘膜下腫瘍
・大腸憩室
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病、非特異性多発性小腸潰瘍症など) 

・胆道癌
・胆石症
・膵腫瘍、膵癌
・慢性膵炎・膵石